仮想敵は911カブリオレ! AMGが開発を担当、予想を超える完成度に仕上がった新型SLにヒットの予感
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏/写真:Kimura Office 102
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏/写真:Kimura Office 102
「メルセデス・ベンツ SL」の歴史は1954年のニューヨーク・オートショーに遡る。当時コンサバだったダイムラー・ベンツ社に対してアメリカのインポーター、マックス・ホッフマンがモータースポーツ専用モデルであった「300SLクーペ(W194)」のロードゴーイングモデルと小型スポーツカーの商品化を依頼、それがかなってニューヨークに「300SL(W198)」クーペと「190SL(W121 BII)」ロードスターが公開されたのである。
その後1957年に300SLにもロードスターが追加されSLシリーズとなり、およそ70年の間、ラグジュアリーなロードスターとして世界中のメインストリートやリゾートに華やかさを振りまいてきた。現行モデル(R231)は既に10年が経過しており、ここ数年はSUVやスポーツEVなど多様化の波にもまれて販売台数は落ち込んでいた。もちろん、こうした趣味的なロードスターは一巡すると下降線をたどるが、市場の環境が大きく変わったので後継モデルの去就が注目されていた。そして2021年10月に7世代目のSL(R232)が発表されたのである。
ニューSLシリーズはこれまでのようにメルセデス・ベンツ自身ではなく、パフォーマンス部門であるAMGによって全くゼロから開発が行われ、モデル名も新たに「メルセデスAMG SL」となった。なんとボディは専用のアルミ製スペースフレームで新設計されている。旧SLよりも18%捻じれ剛性の高いオープンボディのサイズは全長4.71×全幅1.92×全高1.35m、ホイルベース2.70mと、キャビンが2+2になった結果、旧SLよりも長くなった。また60km/h以下であれば僅か15秒で開閉可能なルーフは、メタル製のハードトップから21kgも軽量なソフトトップに変わった。
縦14本のパナメリカーナグリルが与えられたニューAMG SLはロングノーズ&ショートデッキの古典的なロードスターシルエットをもっている。空力特性のCd値は0.31と旧型よりも若干悪化しているが、フロントのアクティブエアインテークとリアの可変スポイラーによってダウンフォースは向上している。
インテリアはドライバー正面に12.3インチのバーチャルコックピットが配置され、画面はクラシックからスーパースポーツまで自由にデザインを選べる。またセンターコンソールにはSクラスと同じ11.9インチのタッチ式ディスプレイが未来的なコントラストを見せている。
このデジタルパッドは反射を防ぐために角度をかえることができ、ソフトには最新のMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)が採用されている。今回のテストで気づいたのは通常のPCやスマホのように使用頻度の高いアイテムが検索メニューの上位に来る点で、目的地入力もやりやすく、おかげで運転に集中できた。
パワートレーンは4リッターV8ターボに2種類のチューンが用意され、「SL55」が476馬力と700Nm、「SL63」は585馬力と800Nmを発揮する。組み合わされるトランスミッションはAMG スピードシフトMCT 9Gオートマチックで4輪を駆動する。その結果0-100km/hは前者が3.9秒/最高速度295km/h、後者が3.6 秒/最高速度315km/hと発表されている。
まずは高性能のSL63でスタートするが、自重1.9トンのロードスターはスロットルを踏み込んだ瞬間から前輪にも理想的なトルクを伝え、AMGならではのV8エグゾーストサウンドを響かせながら豪快な加速を見せる。体の側面と腰をしっかりサポートする標準のスポーツシートは快適で、ロングドライブでも身体からのクレームはなく、姿勢を崩すことなく正しいドライビングポジションを保っていられた。
ドライブモードはコンフォートからレースまで4種類あり、サスペンションの性格も変わるが、どれを選んでもロードホールディングは確かで、しかも4WSがクイックで安定したハンドリングを、さらにAMGアクティブ ライド コントロールでボディのロールが抑えられているので、ワインディングロードを攻め込むことができる。ステアフィールは先代のSLより明らかにシャープでダイレクトである。
ハイウェイではルーフを閉じれば静かでラグジュアリーなスポーツクーペとしてグランドツーリングも可能である。また前に述べたようにソフトトップを採用した結果、240リッターのトランク、さらに「ポルシェ 911 カブリオレ」を意識したと思われるリアシートは明らかにプラス2サイズで身長150cm以下の子供用だが、ラゲッジスペースに使えるので実用性は高い。
後半に試乗した「メルセデスAMG SL55」は性能、装備共に日本で使用する限りでは必要にして十分なパフォーマンスをもっていた。
要するにニュー・メルセデスAMG SLはこれまでの「メルセデス・ベンツ SL」と「AMG GT ロードスター」の2つの性格を巧みに融合させたモデルと言える。本来のスポーツ&ライトなロードスターに戻った新型SLは来年の初めからドイツで販売がスタートするが、価格はベースモデルがおよそ13万ユーロ(約1700万円、19%の付加価値税込み)と予想されている。また日本での発売時期や価格はまだ発表されていない。
【 メルセデスAMG SL 63 4マチック+ 】
全長×全幅×全高=4705×1915×1353mm
ホイールベース=2700mm
車両重量=1970kg
乗車定員=4名(後席は+2)
駆動方式=4WD
エンジン=4.0L V8DOHC ツインターボ
最高出力=430kW(585ps)/5500-6500rpm
最大トルク=800Nm/2500-6000rpm
トランスミッション=9速AT
使用燃料=無鉛プレミアムガソリン
WLTCモード燃費=12.7-11.8L/100km(7.9-7.8km/L)
サスペンション=前:ダブルウィッシュボーン式
後:ダブルウィッシュボーン式
タイヤサイズ=前:265/40ZR20(アルミホイール)
後:295/35ZR20(アルミホイール)
0-100km/h加速=3.6秒
最高速度=315km/h
車両本体価格=13万ユーロ(付加価値税込)
※すべて欧州参考値
ログインしてコメントを書く
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
見やすい?ジャマ? 「車検ステッカー」“貼付位置”変更から1年 「運転席のド真ん前貼り」増えるもいまも「賛否」の声多数
アウディ『Q6 e-tron』、後輪駆動を欧州で追加…航続はシリーズ最長の641km
メルセデス・ベンツの電気自動車セダン「EQE」に30台限定特別仕様車を発売
スバル「インプレッサ・クロストレック」“安全なクルマ”に認定! 最高得点獲得で「ファイブスター賞」受賞
「最強のマスタング」がポルシェ911の記録に挑む!? ニュル6分台に向け極秘テスト
新型WR-V ロングラン実力判定
スズキ“新”「ハスラー」登場! 斬新「黒すぎ顔」×専用2トーン採用! 上質カーキ内装でめちゃ精悍な「新タフワイルド」 通常モデルとの違いは?
ドゥカティが2台のスクランブラーカスタム「CR24I」「RR24I」を発表 Centro Stile Ducati が新解釈を提案
前後シルバーアクセントでSUV感マシマシに!! 地上高アップで本格派に!? 新型ノートオーテッククロスオーバーが本気のマイチェン
【MotoGP】ドゥカティ、ホルヘ・マルティンのファクトリーチーム昇格を決定? 残るはマルク・マルケスの判断に
[15秒でわかる]ドゥカティ『モンスター・セナ』…世界限定販売、アイルトンを称える
SUBARU 北米フォレスターが日本車で唯一の前面衝突予防性能試験で最高評価「Good」を獲得
売れてる軽EV「サクラ」がライラック×黒の乙女系2トーン追加や仕様向上。価格は約4~5万円上昇
こっちが本命? ノートクロスオーバーがデザイン一新。タフ感強調で本家よりアリかも…?
【電動ツインブースト!】新型「911」の目玉はハイブリ搭載「GTS」。加速が大幅進化の理由
ヒロミ絶賛の乗り心地、電動トノカバー高すぎ!? 発売から3ヶ月経ったトライトンのユーザー評価は?
BMW最小SUV「X1」に新グレード追加! 1.5Lの“sDrive18i”は最安の540万円
活気を取り戻すイタリア車。名門「ランチア」の“懐かし系”ニューモデルたちは日本に入ってくるか?
【さよならフィアット500】ついにエンジン車が終了宣言。まだ買える500のグレードまとめ
【566万円から】アウディA4&A5スポーツバックに特別仕様車「マイスターシュトュック」新設定
【ビンボー臭さゼロ】なVW製新型キャンパーの“デザイナーズ感”。日本メーカーも出してほしい